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「陰極線の本性, 電子の発見」
上に得られた陰極線中の
「粒子」の比電荷の測定値を,
水素イオンの比電荷と
比べてみましょう.
1-6 のページの
ファラデーの電気分解の法則
で説明したように,
1 グラム当量の元素を
電気分解で生成する
ためには, 9.65 x 104 C の
電気量が必要です.
ということは,
例えば水素を考えると,
水素の原子価は 1 で
原子量は約 1 ですから,
水素イオンの 1g は
9.65 x 104 C の
電荷を持っている
ことになり,
水素イオンの比電荷は
約 9.65 x 107 C/kg
ということになります.
したがって,
(陰極線の比電荷(e/m)) ÷
(水素イオンの比電荷)
= (1.76 x 1011)
÷ (9.65 x 107)
≒ 1800
となります.
この結果は,
陰極線の「粒子」の質量が
極めて軽く
水素原子に比べて
約 1/1800 であるか,
あるいは
陰極線の「粒子」が
水素イオンより
1800 倍も多くの
荷電を運ぶことが
できることを
意味します.
J.J. トムソンは,
後者はありそうにもないので,
前者の考えを取り,
陰極線の「粒子」は
最も軽い元素である
水素より, さらに
約 1/1800 軽い
微小な粒子であると
考え, これを
電子 (electron)
と名付けました.
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