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2-4: トムソンの原子模型

  「J.J. トムソンのレーズン・パン模型」
 J.J. トムソンは, 原子の構造を レーズン・パン (ぶどうパン) のようなものと 考えました. つまり, 大きさが約 10-10 m 程度のプラスに帯電した 球形の連続的な「パン生地」 の中に「乾ぶどう」の ように電子 が散らばっていて, 全体として電気的に 中性となっている という考え方です. これを トムソンの原子模型 といいます.

 

  「トムソン模型とα 粒子の散乱」
 前ページで述べたように, ガイガーとマースデンは, α 線を非常に薄い 金属 (金や銀) の箔に あてて, α 粒子の散乱の実験 をしました. その結果,金属箔に入射した α 粒子の大部分は, 箔を通り抜けて 直進するけれども, ごく一部は大きな角度の 方向へ散乱される ことがわかりました.
 この結果を トムソン模型に照らして 考えて見ましょう. ちょっぴり 数式が出てきますので, 別のページで説明します.
2-4-A: 「トムソン模型によるα 粒子の散乱」
 上のページ (2-4-A) で みたように, 原子がトムソン模型 のような構造を もつものとすると, それによる散乱の角度は せいぜい 0.01° くらいです.
 α 線の散乱の実験において ターゲットとして使われる 金属箔の厚さは, だいたい 10-6 m 程度で, 原子の大きさが 10-10 m ほどですから, 金属箔の中に原子が ぎっしりと並んでいるとすれば, 箔の厚さの方向に 約10,000 個の原子が 並んでいるはずです (下図参照).




これらの原子に, α 粒子が次々に 衝突 (散乱) して 行くと, このような 多重散乱の結果, 1回々々の 散乱の角度が 0.01°でも 10,000 回重なれば 100°にもなり, 大きな角度になる と思われるかも知れませんが, 散乱の方向はランダム ですから, 10,000 回の 散乱の方向が きれいに揃うことは絶対に あり得ません.
 したがって, ガイガーとマースデンの 実験で見られるような 90°を超えるような 大きな角度の散乱は, このような多重散乱 では説明できません. つまり, トムソンの模型は 成り立たない ことになります.
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