|
「トムソン模型とα 粒子の散乱」
前ページで述べたように,
ガイガーとマースデンは,
α 線を非常に薄い
金属 (金や銀) の箔に
あてて, α 粒子の散乱の実験
をしました.
その結果,金属箔に入射した
α 粒子の大部分は,
箔を通り抜けて
直進するけれども,
ごく一部は大きな角度の
方向へ散乱される
ことがわかりました.
この結果を
トムソン模型に照らして
考えて見ましょう.
ちょっぴり
数式が出てきますので,
別のページで説明します.
2-4-A:
「トムソン模型によるα 粒子の散乱」
上のページ (2-4-A) で
みたように,
原子がトムソン模型
のような構造を
もつものとすると,
それによる散乱の角度は
せいぜい
0.01° くらいです.
α 線の散乱の実験において
ターゲットとして使われる
金属箔の厚さは,
だいたい 10-6 m
程度で, 原子の大きさが
10-10 m
ほどですから,
金属箔の中に原子が
ぎっしりと並んでいるとすれば,
箔の厚さの方向に
約10,000 個の原子が
並んでいるはずです
(下図参照).
これらの原子に,
α 粒子が次々に
衝突 (散乱) して
行くと, このような
多重散乱の結果,
1回々々の
散乱の角度が 0.01°でも
10,000 回重なれば
100°にもなり,
大きな角度になる
と思われるかも知れませんが,
散乱の方向はランダム
ですから, 10,000 回の
散乱の方向が
きれいに揃うことは絶対に
あり得ません.
したがって,
ガイガーとマースデンの
実験で見られるような
90°を超えるような
大きな角度の散乱は,
このような多重散乱
では説明できません.
つまり,
トムソンの模型は
成り立たない
ことになります.
|