第2部目次
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2-2: 原子の中の電子の個数

   第1部で学んだように, 原子の中に電子が 存在することが わかりました.
 それでは, それぞれの原子の中には きまった個数の 電子があるのでしょうか? この問題に解答を 与えたのは, 原子による X 線の散乱実験でした. 以下で簡単に 説明しましょう.

  「X 線の性質」
 X 線は 真空放電 の実験をしていた レントゲン (ドイツ: 1845 - 1923) によって偶然 発見されました(1895). レントゲンは, 黒い 厚紙で巻かれた クルックス管 から, 透過性の極めて強い 一種の「光線」が出て, 離れた場所にある 蛍光物質を 発光させ,また 机の引出しの中に しまってある写真乾板を 感光させることに 気がつきました. これは陰極線の作用ではない ことは明らかでした. なぜなら陰極線はガラスも 黒い厚紙も通しませんから. この未知の「光線」は 「未知」と言う意味で X 線 と名付けられました.
 クルックス管から X 線が出る理由は, 高速の陰極線 (電子) が ガラスや金属に 衝突するからです. 電磁気学によれば, 荷電粒子が加速または 減速するときに 電磁波 (= 光) を 出しますクルックス管の中の 陰極線 (電子) が ガラスなどに衝突すると, 電子がストップし, つまり急速に 減速され, このとき 電磁波が出るはずです. これが X 線が出る 理由です.
 普通の光と同様 X 線が 電磁波である という証拠は, X 線を極めて狭い スリットを通すと 光と同様な 波動 の性質 (回折 現象) を示すからです. また偏光するという 性質も実験的に 確かめられました.

  「原子によるX 線の散乱, 電子の個数」
 原子は電気的に中性です. 一方, 原子の中にマイナスに 帯電した電子があることが わかっていますので, このマイナス電気を 打ち消すだけの プラス電気を帯びた 「ある物」 が原子の 中にあるはずです. また電子の質量は 原子の質量より はるかに小さく, 最も軽い水素原子と 比べても, 約 1/1800 ですから, プラス電気 を持つ 「ある物」原子の質量のほとんど 全てを担っているはずです. まずこのことを念頭に おいてください.
 上に述べたように, X 線は電磁波であることが わかりました. この X 線が原子に当たると, X 線の電場が原子内の 荷電物質 (電子「ある物」) に 力をおよぼして 振動させます. 加速・減速を繰り返して 振動する荷電物質は 電磁波を四方に放射します. このようにして, 下図 に示すように, 入射した X 線が いろいろな方向に 散乱されるわけです.
 
   電磁気学によれば, 加速度を持った荷電粒子が 放射する電磁波の強さは 粒子の加速度の2乗に 比例します. ニュートンの運動方程式 によれば, 加速度は 働いた力を質量で割った ものです. したがって, 放射される電磁波の強さは 質量の2乗に反比例します. 原子の中のプラスの「ある物」が 放射する電磁波の強さは, それよりはるかに軽い 電子が放射する電磁波に 比べて 1/1000000 よりも 弱く, 完全に無視できます.
 つまり, X 線は原子の中の 電子だけによって 散乱される と考えて よいでしょう.

  「原子内の電子の個数」
 上図 のように, X 線をいろいろな原子に 照射する実験を しました. このとき, 入射した X 線の 一部は散乱され, その分だけ 透過 X 線の強さは 弱くなります. この 減衰度原子の中の電子の個数に よります. これを詳しく調べた結果, 電子の個数がはっきりと わかりました.
 水素原子の 電子の個数は1, ヘリウムは2, というように, 電子の個数は 原子量の約半分 であることが わかりました.

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