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1-4: 原子核の構成要素,まとめ

  「原子核の構成要素」
 1930 年頃までは, 原子核は 陽子電子とから 構成されていると 考えられていました. たとえば,原子番号が Z =7 の 窒素14は, 14個の陽子と 7個の電子が結合したものであると 考えるわけです. この考えは大変もっともらしく 思われましたが, 前ページで述べたような 重大な問題点があることが 分かりました.
 チャドウィックによる 中性子の発見が報告されるや, 直ちに,イワネンコ (ソ連) と ハイゼンベルク (ドイツ:1901−76) は それぞれ独立に, 「原子核は陽子と中性子から 構成されている」 という 考えを提唱しました (1932). これが「原子核物理学」 の第一歩であり, 原子番号がZ の原子の 原子核は,Z 個の陽子N 個の中性子とで できている複合粒子系である という考え方が定着しました.
 従って,窒素14 は Z =7, N =7 の複合粒子系であると いうことになります. また,同じ Z でありながら 異なる N の原子核が 同位体 であり, 同位体の存在も 自然に理解できます.

  「核子」
 陽子と中性子の質量は ほぼ同じです. 違うのは電荷 だけです. 現在測定されている 陽子と中性子の基本的な性質が 下表 にまとめられています.

 これらの陽子と中性子の 性質から, ハイゼンベルクウィグナー (アメリカ:1902-95) は, これらは 単一の粒子の異なる 状態であると考えました. この粒子を現在では 核子 (nucleon) と呼んでいます.
 したがって,原子核の 構成要素を一語でいえば 核子 ということになります.

  「まとめ」
 第1部で学んだことを まとめておきましょう.
  (1) ラザフォードの有核原子模型成功によって, 原子核の存在が はじめて認識されました.
  (2) 原子核の重さ原子全体の重さに ほぼ等しく, 直径は約 以下であり, 原子全体の大きさ 約 に比べて格段に小さい.
  (3) チャドウィックによる 中性子の発見により, 原子核の構成要素は 陽子中性子 (まとめて核子) であるということが 明らかになりました.

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