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1-3: 分子という概念の導入

  「分子」
 特有の化学的性質をもつ 最小単位の粒子を分子 といいます.
 例えば, 水を小さく分割していくと, 水の化学的性質をもつ最小単位である 水の分子 (H2O) になります. この水分子を さらに分割すると 水素原子 2 個 と 酸素原子 1 個 になりますが, 原子にまでなってしまうと, 水の性質は 失われます.
 ドルトンの原子論においては まだ分子という概念は 明確では ありませんでした. 分子原子はっきりと区別されるように なったのは, 下記のアボガドロの法則 以後のことです.

「アボガドロの法則」
 ゲイ・リュサック (フランス: 1778 - 1850) は, 「2 種類の気体が完全に化合するとき, それらの体積は 簡単な整数比 となる」という 気体反応の法則 をみつけました(1809).
 アボガドロ (イタリア: 1776 - 1856) は, この整数比こそ 2 つの気体に含まれる 分子の数の比 であると考え, 「温度と圧力が同じであれば, 気体の種類が異なっても, 同じ体積の気体の中には 同じ数の分子が 含まれている」 という アボガドロの法則 を提案しました(1811).
   この法則はのちに 実験的に確かめられました. このアボガドロの法則によって, 分子どうしや 原子自体の相対的な重さ を比較できる ようになりました.
 水の分子は H2O, 一酸化炭素の分子は CO, 二酸化炭素の分子は CO2 ですが, アボガドロの法則に則ると 単一の元素からなる気体分子, たとえば水素分子 や酸素の分子は 2個の原子がくっついた ものであり, それぞれ H2 および O2 と考えられます. このように 2個の原子で できている分子を 2原子分子といいます. したがって, 水素と 酸素が 化合して 水になる場合は 下図 のようになります.


しかし, ヘリウムや ネオンやアルゴン のような希ガス (不活性ガス) の分子は 原子1個です. このような分子を 1原子分子といいます.

  「分子量」
 分子の質量, すなわち 分子量 は, その分子を構成する 原子がわかれば, それらの原子の 原子量から求められます. たとえば, 水の分子は H2O であり, 水素 H の原子量は 1 [u], 酸素 O の原子量は 16 [u] ですから, 水の分子量は 1×2 + 16 = 18 [u] となります.

  「アボガドロ定数」
 分子量だけのグラム数 の物質の量 モル (mol) といいます.例えば 炭素の分子量は 12 [u] ですから, 炭素の 1 モル は 12 g の炭素のことです.
 温度が 0 ℃, 圧力が 1 気圧 (= 760 mmHg) のもとで, 1 モルの気体の体積は, 気体の種類によらず一定で, 22.4 リットル です.
 1モルの物質の中に 含まれる分子の数は一定です. この数を アボガドロ定数 と呼び, 記号 NA で表します. (以前はアボガドロ数と 呼んでいました.) つまり, アボガドロ定数に 等しい数の 分子の集まりが 1モルです. 現在では, アボガドロ定数を 調べる色々な方法が ありますが,それらの結果は
NA = 6.0221367 x 1023 mol -1
となっています.

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