第1部目次
前ページ
次ページ
1-4: 分子の運動

  「原子説への疑惑」
 マクスウェル (イギリス: 1831 - 79) や ボルツマン (ドイツ: 1844 - 1906) によって 発展させられた 気体分子運動論統計力学 は, 原子・分子説を 基礎にして成り立っていました. したがってこれらの理論の 成功は,原子・分子説が 正しいことを 証明しているように 思われました.
 しかし 20世紀になっても, 原子・分子の考え方は 便利ではあるけれども あくまで人間の思考の 産物であり, 「原子・分子の実在の 実験的証明がない」 という理由で, 何人かの有力な 学者によって 強く反対されていました.
 この反対論を打ち破ったのが, 下に述べるように, ブラウン運動観測でした.

  「分子運動の速さ」
 気体中の分子は 常にめまぐるしく 動き回っています. 気体分子の速さを 最初に推定したのは ジュール (イギリス: 1818 - 89) でした(1851). 容器に入れた気体分子は 高速で動き回り, 分子が容器の壁に 衝突するときに 壁に加える力が 総合されて 気体の圧力 になる,と ジュール は考えました. この考えに基づいて, 気体分子の運動の速さを 推定してみましょう.
 内容は簡単ですが 少し数式が出てきますので, 別のページ で説明しましょう.
1-4-A: 「気体分子の速さの推定」
 上に引用した別ページ (1-4-A) でみたように, 気体や液体中の分子は 猛烈な速さで ランダムに運動している と考えられます. 水の分子を直接見ることは できませんが, それらの運動を間接的にでも 観察することができれば, 分子の存在を確かめることが できるはずです. これを可能にしたのが ブラウン運動 でした.

  「ブラウン運動」
 水に浮かべた花粉が 水を十分に吸って破裂し, 出てくる微粒子が たえず続ける 不規則な運動の様子を, 植物学者のブラウン (イギリス: 1773 - 1858) が顕微鏡を 使って観察しました(1827). ブラウンは, 花粉のみならず, さまざまな物体から 出てくる微粒子が 同様な運動をすることを 報告しました.
 この運動は ブラウン運動 と呼ばれ, 液体中のみならず, 空気中の煙や煤の微粒子 等でも見られる 普遍的な運動であり, 高速運動をしている 気体や液体の分子が その中に分散している 微粒子に衝突するために 起きるものと 考えられました.

 このブラウン運動に 分子論の立場から 理論的説明を加えたのが アインシュタイン (ドイツ生まれ: 1879 - 1955) でした(1905).
 1908 〜 13 年, ペラン (フランス: 1870 - 1942) は数々の 困難な実験を繰り返し, アインシュタインによる 分子理論を実証し, 分子の大きさや アボガドロ定数を 求めることに成功しました. これにより 原子・分子の実在 が広く 認められるようになりました.
  ペランが観測したブラウン運動
ブラウン運動をしている 乳香 (香料の1種) の微粒子の位置を 一定時間ごとに 記録したものです. 実際は3次元の運動ですが, 平面に投影して 描いてあります.

   ブラウン運動を 実際にご覧になりたい方は 次の WWW サイトに アクセスして下さい.
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5174/indexb.html

トップ
  第1部目次へ戻る 前ページへ戻る 次ページへ進む