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2-7: 第2部のまとめ

   第2部で学んだことを まとめておきましょう.
  (1) 放射能の発見と, 放射性元素の崩壊 の発見により, 原子は永久に 不変ではなく, 内部構造を持ち, 変化しうる物であること がわかりました.
  (2) 原子は 中心に重い 原子核 があり, その周りを軽い 電子 がとりまいている という構造を 持っています.
  (3) 原子核の大きさは 極めて小さく, 約 10-14 m またはそれ以下です.
  (4) 原子核も内部構造を持ち, 変化しうる物であり, その構成要素の1つが 陽子です.

  「ラザフォードの原子模型の問題点」
 太陽系においては, 太陽の周りを 惑星が回転運動を しています. 同様に, ラザフォードの 有核原子模型においては, 原子核の周りを 電子が回転運動を していると 考えられます.
 太陽と惑星を 結び付けているのは 万有引力です.一方, 原子核電子結び付けているのは クーロン力です. このとき, 原子核が電子を 引っぱる クーロン力電子の回転運動による 遠心力 とがつりあって安定な原子を 作っていると, 素朴に考えたくなりますが, この考えには 重大な 「困難」あります.
 1個の電子が 1個の陽子の周りを 回転運動していると 考えられる 水素原子 の場合を 例に取って説明しましょう.
  (A) 遠心力クーロン力つりあいは

と書かれます. 左辺が遠心力, 右辺がクーロン力の 大きさです. r は電子の回転の半径 (水素原子の半径,) v は電子の速さ, m は電子の質量です. この式を書き直すと

となります. したがって, このつりあいの式 だけ見ると, 水素原子の半径は 電子の速さの2乗に 反比例し, 速さが変われば 半径が変化します. つまり, 原子は任意の大きさを もつことができます. ところが実際の 水素原子の大きさは 常に一定です.
  (B)  電磁気学によれば 加速度をもって 運動する荷電粒子は 電磁波を放射し, エネルギーを失います. 電子が エネルギーを失えば, 速さ v が小さくなり, 上のつりあいの式が 成り立たなくなって 電子はらせんを 描きながら 原子核に 落ち込んで行き, 原子はつぶれてしまいます. ところが実際の水素原子は とても安定で, つぶれることはありません.

 上記のラザフォード模型の問題点, 特に原子の安定性に 関する問題点は, ラザフォード自身よく気が付いて いましたが, これは後で何らかの方法で 解決されるべき問題として, とりあえず後回しに することにしました.

 以上のような 「困難」 を解決しなければ ミクロの世界本当の姿は 見えてきません.

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