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2-2: 原子核の大きさ

  「原子核の大きさを測る」
 原子核の大きさは ラザフォード原子模型による 分析から,大雑把に 以下であるということは 分かっていました. しかし,個々の原子核の 大きさを調べるには どうしたらよいでしょう.
 目で物体を見てその大きさを 測るには,光を当てて その反射光を見ます. 反射光が見られるのは, 光が物体と 相互作用するからです.
 同様に, 原子核の大きさを測るには, 何らかの粒子を当てて その反応を見るのが よいでしょう. たとえば, 当てる粒子としては α粒子核子電子光子,等が考えられます. 最も便利なのは電子 です. しかし,電子は荷電をもつ 陽子とは相互作用しますが, 中性子とはあまり相互作用 しませんので, 電子の反射 (電子散乱) で測ることが 出来るのは,主として 原子核内の陽子の分布すなわち荷電分布 です.
 陽子の分布と, 原子核内の中性子・陽子を 含めた全体の物質分布とは 異なるかもわかりませんが, 陽子の分布によって 原子核の大きさが 大体分かるはずです. そのような詳しい実験が 行われ,種々の原子核の 荷電分布測られました. その実験結果の一部が 下図 に示されています.
  「原子核の荷電分布」 の実験結果
 電子散乱による荷電分布の 測定結果です. 一例として赤線Ca の場合の荷電分布 (陽子分布) を示しています. Ca の半径が R で示されています.

  「原子核の半径」
 原子核は近似的には球形 と考えられます. つまり,陽子や中性子が 集まって球形の塊を 作っていると考えましょう. (厳密には球形から ずれているかも知れませんが, この点については 後で議論されるでしょう.)
 上記の荷電分布の実験結果から, 原子核内の荷電分布 ρ(r) は, 次の関数によって よく表されます. (この型の関数は, しばしば Woods-Saxon 型 と呼ばれます.)

この関数において は実験結果に合うように 選ばれた適当な定数です.
 これらの定数を, 原子核毎にうまく選べば, この関数 が,上述の種々の原子核における 荷電分布の実験結果を 良く再現するように 合わせることが出来ます. その結果選ばれた R の値が その原子核の半径 です.
 たとえば, 上図 において, 赤字 で示した R が Ca 原子核 (正しくは Ca40) の 半径を示しています.
 このようにして, 核種の広い範囲にわたって, それらの半径が詳しく調べられました. 電子散乱だけでなく, その他のさまざまな 方法が用いられました. その結果, 原子核の半径かなり一般的に, 次の式で表されることが 分かりました:

ここで, はその原子核の 質量数 です.

  「原子核の密度と密度の飽和性」
 上で学んだ原子核の半径から 原子核の体積 V

となり, したがって, 原子核の 密度 ρ は

となります. つまり,原子核の密度は その種類によらず ほぼ一定です. この性質を 密度の飽和性 と呼び, 原子核の著しい 特徴の一つです. この結果から, 原子核内の核子間の 平均の距離 d は

であることが分かります.
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