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2-3: 原子核の質量,結合エネルギー

   原子核は Z 個の陽子と N 個の中性子とから 構成されています. その原子核の質量M (Z, N ) と表すことにしましょう.
 原子核が単に陽子と中性子 の集まりであるならば, その質量 M (Z,N ) 陽子の質量 Z 倍と 中性子の質量 Nの和 となる筈です.
 しかし,原子核は単に 核子 (陽子と中性子) が 集まっただけではなく, それらが相互作用 (核力) で 強く結合しています.

  「原子核の質量欠損」
 一般に,2つ以上の粒子が 相互作用して結合すると, 全体の質量は 元の粒子の質量の合計より 軽くなります. 結合が強ければ強いほど 質量は軽くなります. この質量の減少を 質量欠損 と呼びます.
 陽子数 Z中性子数 N の原子核の 質量欠損 は,

で定義されます.

「質量とエネルギーの等価性, 質量を表す単位」
 アインシュタイン (ドイツ,アメリカ:1879-1955) の 特殊相対性理論によって, 質量はエネルギーと同等である ことが分かっています. この同等性 (等価性 ) は, 公式

で表されます. つまり, 質量 mエネルギーに 換算すると E となることを 意味します. 光速 c の二乗が 掛っていますから, 小さな質量でも ものすごく大きな エネルギーとなります.

   原子核の世界では, 通常扱う質量は極めて微小です. そこで,原子核の世界では, 便利のため,しばしば 質量をエネルギーに換算 して 表します.
 例えば,陽子の質量は であり, 極めて微小な値ですが, c の二乗を掛けて エネルギーに換算すれば

となります. したがって, 陽子の質量は

と表されます.
 このように, 原子核の世界では, 質量の単位 として,

がよく使われます.

  「結合エネルギー」
 原子核内の複数の核子 (陽子と中性子) が 相互作用して結合すると, 質量欠損 が生じます. 質量欠損をエネルギーに 換算したものが 結合エネルギー です. したがって, 結合エネルギー B (Z, N ) は

と表されます. つまり, 原子核の結合エネルギーは, 核子の結合の 強さの度合いを表し, その値は原子核の質量 M (Z, N ) を測ることによって 得られます.
 現在では個々の 原子核 (核種) の質量は, 質量分析器 などによって 精密に測定できます.
 ZN全ての範囲にわたって 原子核の質量を測って, 1核子あたりの結合エネルギーを 測定したものが 下図 に示されています. この図から分かるように, 質量数が小さい原子核においては 値にばらつきがありますが, 質量数が 20 を超えると 1核子あたりの結合エネルギーは 大体一定で, 約 8 MeV となっています.
 このように,原子核における 1核子あたりの結合エネルギーが ほぼ一定であるという性質を, 結合エネルギーの 飽和性 といい, 原子核の著しい 特徴の一つです.
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