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「ワイツゼッカー・
ベーテの質量公式」
ワイツゼッカーの
液滴模型のアイデアに
基づいて,
ワイツゼッカー と
ベーテ
(ドイツ, アメリカ:1906−2005) は
原子核の結合エネルギーを
表す簡単な公式を
考案しました.
いま,
陽子の質量を
,
中性子の質量を
としましょう.
陽子数 Z,
中性子数 N
の原子核の質量を
M (Z, N )
と表すと,この原子核の
結合エネルギー
B (Z, N ) は,
前ページ
で学んだように,
となります.
ワイツゼッカー と
ベーテは
この結合エネルギーが
近似的に
と表されることを
見出しました.
これが有名な
ワイツゼッカー・
ベーテの質量公式
です.
半経験的質量公式
と呼ばれることもあります.
この公式の右辺の各項の
意味を,液滴模型の
考え方から理解することが
出来ます.
すなわち,
右辺第1項は
体積に比例する
体積エネルギー で,
結合エネルギーの
主要部分です.
第2項は液滴の
表面積に比例するので,
表面張力による
表面エネルギー
と考えられます.
第3項は
陽子どうしの間に働く
クーロン斥力による
エネルギー損失に当たる
クーロン・エネルギー
です.
同じ質量数なら
陽子数 Z が大きいほど
クーロン・エネルギーが
増加して,
エネルギー的に損をするので,
質量数が大きい原子核では
一般に Z に比べて
N が大きくなります.
しかし, 核子間に働く力
(核力) の性質から,
逆に Z と
N との差が小さいほど
エネルギーの得をする
という性質があります.
この効果が
第4項の 対称エネルギー
です.
さらに原子核の中では,
同種核子はペアーを作りやすい,
という性質があり,
偶数のZ またはN は
奇数の場合に比べて
エネルギーの得をします.
第5項は
この性質を表している
偶奇質量差
です.
第4項の対称エネルギー
と第5項の偶奇質量差
に関しては,
少し専門的になりますので,
詳しい議論は
ここでは省略します.
上式のワイツゼッカー・
ベーテの質量公式
における
各項の定数は
実験値に合うようにきめられ,
その結果は
となります.
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