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2-5: 魔法の数,周期律

   前ページで学んだように, 原子核が「水滴」のような 構造をもっているという 液滴模型アイデアに基づいた ワイツゼッカー・ベーテ の質量公式 によって, 原子核の結合エネルギーが 大局的 には かなり良く再現できる ということが 明らかになりました. ( 前ページの最後に示した図 参照.)
 しかし, 詳細に見ると, ぴったりと 再現されるわけでは ありません. 実験値が質量公式の 値から少しずれている 場所 (原子核) が見受けられます.

  「実験値と質量公式とのずれ」
 どの原子核において, 実験的に得られた 結合エネルギー が, 質量公式の値と ずれているか, 少し詳しく見たものが 次の図 です. 縦軸が, 実験的に得られた 結合エネルギーと, 質量公式から得られた 結合エネルギー との ずれ (差) を示しています.

 

  「魔法の数 (マジックナンバー)」
 上の図から分かるように, 中性子数 N が 28,50,82,126 の原子核は特に 結合エネルギーが 大きいことが 明らかです.
 陽子数 Z についても 同様な分析を 行なうことが出来ます. 詳細な分析を行なった結果, 陽子数 Z または 中性子数 N
2, 8, 20, 28, 50, 82, 126
であるような原子核は 特別にそれらの 結合エネルギーが大きい ことがわかりました. (Z = 126 の原子核は 存在しないので, 126 は中性子数にのみ 当てはまります.) これらの数は 原子核における 魔法の数 (マジックナンバー) と呼ばれています.
 マジックナンバーの証拠は 結合エネルギーだけに 限りません. 例えば, 原子核の 第1励起状態のエネルギー を詳しく調べると, 陽子,または中性子の数が マジックナンバーであるような 原子核の励起エネルギーが 特別に大きく, このような原子核が, 特別に励起し難い, 安定な核であることが 分かります. 下図 にその1例 を示します.

  「ダブル (二重) マジック核」
 陽子数 Z, 中性子数 N がともにマジックナンバー であるような核

は中でも特別に 結合エネルギーが 大きく,安定な原子核です. このような原子核を ダブルマジック核 (二重マジック核) ということがあります.

  「原子核における周期律」
 原子構造における 周期律 (または元素の周期表 ) については,本セミナーの 「ミクロの世界 −その2− (量子力学入門)」の 「元素の周期律」 のページ説明しました.
 原子においては Z = 2,10,18,36,54,86 という数字が,特別な 意味を持ち, これらの数字の原子番号 をもつ元素 He,Ne,Ar,Kr,Xe,Rn が 特別に安定な元素 (希ガス) であり,これらの希ガスを 境目にして 元素の性質が 周期的に変化するという性質 (= 周期律) が, 量子力学 によって見事に 説明できることを 学びました.
 それでは, 原子核においても 同様な 周期律 が成り立つのでしょうか?
 原子核における マジックナンバー を原子の場合と比較し, 考え合わせると, 原子核においても 原子におけると同様に, 周期律ありそうな気がします.
 確かにあるのです. 次ページ詳しく説明しましょう,
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