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2-6: 殻 模 型

   陽子数 Z または 中性子数 N魔法の数 (マジックナンバー)
Z または N = 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126
であるような原子核は 特別に安定であり, これらが原子 の世界における 希ガス に相当し, これらを境目にして 性質が周期的に変化する という 元素の周期表 と同様な 周期律 が,原子核でも 成り立っている のではないかという アイデア が提案されました.

  「原子における 周期律の成立する理由」
 本セミナーの 「ミクロの世界 −その2− (量子力学入門)」の 「元素の周期律」 のページ で詳しく説明したように, 原子における周期律は 原子の殻構造 によって説明することが 出来ました.
 もう一度, 原子の殻構造 について復習しましょう.
 原子の性質の 基本的な部分は, 原子の中心の 原子核 の周りに 広がっている 電子分布の構造 によって きまります. つまり, 電子の数 や,それらがどのような 配置 (配位 ) を持っているかによります.
 原子の中の電子は, 中心にある核からスタートして, 外へ向かって層を なしています. これらの層は と呼ばれ, このような構造を 殻構造 と呼んでいます.
 電子は原子核の プラス(+)電荷から クーロン引力 (および他の電子からの クーロン斥力) の総和によって 原子核に結合されています. 別の表現をすると, 電子は原子核などからの 力の合力が 平均ポテンシャル となり, そのポテンシャルに 束縛 されているのです.
 ポテンシャルに 束縛されている電子は, 飛び飛びのエネルギーを持つ 固有状態 にあって, これらが層状に 殻構造 をつくる ということは 「元素の周期律」 のページ で詳しく学びましたが. このとき,各々の を占有する きまった電子の個数によって, きまった原子番号 Z 希ガス原子が あらわれます. これが原子における 殻構造の出現の理由です.

  「原子核の殻模型」
 原子の場合と同様に, 原子核においても周期律が 存在し, 殻構造が 成り立つのでは ないかというアイデアは, かなり早い時期から 考えられていました. しかし,原子と原子核とでは, 次のような点で. ずいぶん事情が 異なります.
  (1) 原子には 系全体の中心に重い 原子核があり, この原子核が クーロン引力で 電子を引きつけている のに対して, 原子核の場合, その中心になるような 特別なものが ありません.
  (2) 原子核の場合, 系全体が「水滴」のような イメージで描ける 液滴模型 が成り立つことが 分かっているのに対し, 原子に対しては そのようなイメージが 描けません.
   最大の問題点は, 原子核における 魔法の数 (マジックナンバー)
Z または N = 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126
が, 原子の場合
Z = 2, 10, 18, 36, 54, 86
と, かなり異なっている点でした.
 原子核においても, 原子と同様に, 仮に殻構造が 成立するとしても, その原因となる 平均ポテンシャル はずいぶん異なるであろう ことが想像されます.
 原子の場合は, 中心の原子核の Ze の荷電から受ける クーロン引力 (と その他の電子から受ける クーロン斥力との合力) による 平均ポテンシャルを 考えると, 比較的容易に 上記の数値 (Z = 2,10,18,36,54,86) を導くことが出来ました. (「元素の周期律」 のページ参照).
 しかし, 原子核における マジックナンバー を再現するような 平均ポテンシャル を見出すのは 大変困難でした.

  「メイヤー・イェンゼン の殻模型」
 1949年, メイヤー (アメリカ:1906−72) と イェンゼン (ドイツ:1907−73) らは,それぞれ独立に, 原子核における マジックナンバーを 再現することができる 平均ポテンシャルを 提案しました. これにより, 原子核における 周期律が理論的に 説明でき, 原子核における 殻構造 の存在が証明され, その後の原子核構造 の研究の 飛躍的発展の基礎を 作りました.
 なお,メイヤー・イェンゼンの 提案した 平均ポテンシャルには, LS力 と呼ばれる たいへん特殊な ポテンシャルが 加えられており, この殻模型は jj 結合殻模型 とも呼ばれます. この LS力ポテンシャルこそ, メイヤー・イェンゼン によって提唱された すばらしいアイデアですが, その理論は やや専門的になりますので, ここではその詳細は割愛します.
 下図メイヤー・イェンゼンの 殻模型によって マジックナンバーが再現される エネルギー準位 と, 原子の場合のそれとの 比較が示されています.
  「平均ポテンシャル の中のエネルギー準位」
 赤色 のレベルが メイヤー・イェンゼンの 原子核の殻模型 における核子が入る エネルギー準位です. 青色 のレベルが 原子の殻模型 の場合です.
 各々の準位に, 原子核の場合は陽子・中性子が, 原子の場合には電子が, 低い方から順に きまった個数だけ入ります. ○ で囲んだ数字が, その準位までに入れることができる 粒子の個数です. これらがマジックナンバーを 再現します.
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