第3部目次
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3-5: エネルギー量子の発見

 前ページで学んだように, 空洞放射のスペクトル (振動数毎の強度分布) は,振動数νが小さいときは レーリー・ジーンズの公式 が合い, νが大きいときには ウィーンの公式に 合致します. プランクは この間をつないで νのすべての範囲で 測定値によく合う プランクの公式 を発見しました.
   空洞内の電磁場の 固有振動の数, すなわち真空中の 振動の自由度の数は, 既に レーリー・ジーンズの公式を 導いたとき 求めました. 振動数がνとν+dν の間の固有振動の数は, 単位体積当たり

です. これら全ての自由度に kT のエネルギーが 等分配されると考えると, レーリー・ジーンズの公式 が出てきます. レーリー・ジーンズの公式 とプランクの公式とを 比べると容易にわかるように, 実際には kT だけのエネルギーが 等分配されないで, 分配されるエネルギーは

となっています. つまり, 配分されるエネルギーには P (hν/kT ) という関数の 重み (ウエイト) が かかって エネルギーの配給が 減らされているわけです. この 重み関数

であり, x が小さいときには 値は 1 ですが,大きくなると 1 よりずっと小さくなって その分だけ エネルギーの配給が 減らされます.
 つまり, hν/kT が大きいときには エネルギー等分配の法則 は成り立たない ことを意味します.

  「エネルギー量子」
 このように プランクは実験結果と 良く合う プランクの公式 を発見しました. それ自体 大発見に 違いありませんが, プランクの偉さは そこにとどまっていなかった ことです.
 プランクは, プランクの公式の よってくる 根本の理由を 追求しました. その結果, ついに エネルギー量子 という画期的な 考え方に到達しました. これを以下で 説明しましょう.
 物質を小さく分割して 行くと,ついには 分子原子 になります. このように物質は 連続的ではなく, 基本単位多数集まって 構成されています. この性質を物質の 「原子的性質」 と呼びましょう. 私達は電気もまた 基本単位 (電気素量) があることを学びました. つまり,物質も電気も ともに「原子的性質」を 持っています.
 プランクは エネルギーにもまた 基本単位があるのではないかと 考え,これを 「エネルギー量子」 と名付けました. つまりエネルギーの 「原子的性質」です.
 この考えに立脚すると, エネルギー等分配の法則 が成り立たなくなり, その結果 プランクの公式 を見事に導き出すことが できることを 示しました(1900). これは 古典論 ではとうてい理解できない, 自然科学における 革命 でした. これこそ20世紀の 新しい物理学の スタートでした.

  「エネルギー量子とプランクの公式」
 空洞放射は バネ (調和振動子) の 集まりと同等であると 言いました. 1つ1つの振動子の エネルギーは

の形をしています. q は振動子の 位置座標, p運動量を表す 変数です.
(3-2-A) のページ で詳しく述べたように, エネルギー E平均値は ボルツマン分布則 を用いて

となります. ただし

です. エネルギーが連続的であれば, E の平均値は kT となって 等分配則が得られます.
 しかし,E が連続的に あらゆる値を 取ることができない ならば, pq勝手な値をとることは できません. いまエネルギー量子の 大きさをεとすると, バネのエネルギーEεの整数倍 しか 取ることができないので, pq次の式

を満たす値しか 取ることができません. このことを考えると, 上記のE の平均値は 積分計算ではなく, 別の計算方法を 用いなければなりません. 難しい計算ではありませんが, 少し数式が必要ですので 詳しくは別のページ
3-5-A: エネルギー量子とプランクの公式
をご覧下さい.
 上で引用した 別ページ (3-5-A) で見たように, バネ (調和振動子) のエネルギー E がεの整数倍しか 取ることができないとすると, その平均値は

となります. これにバネの数 (固有振動の数: このページの最初の式) をかけ,ε = hν とすると, 結果はまさに プランクの公式 に他なりません.

  「エネルギー量子の発見」
 上に述べたように, 空洞内の振動数νを もつ固有振動のエネルギー Ehν の整数倍の値

しか取ることができない という結論になります. 従来,エネルギーは 連続的だと考えられて 来ました.しかし今や エネルギーもまた 不連続で, hν という エネルギー素量存在する ということになりました.
 このようにして 自然界における 「原子的性質」物質や電気だけではなく, エネルギーにまで 拡張される という画期的な 考えが 20世紀の 幕開けとともに プランクによって もたらされたのです(1900).

  「プランク定数」
 現在では プランク定数 h の精密な測定がなされて, その値は
h = 6.6260755× 10-34 J・s
です. プランク定数は [エネルギー]×[時間] = [作用] の元を持っているので, 作用量子呼ばれることもあります.

  「固体の比熱」
 第3部の第2ページにおいて 固体の比熱 について 議論しました. 固体を 3NA の自由度を持った振動子の 集まりと考え, エネルギー等分配の法則 を適用すると, 温度が室温以上であれば 固体の比熱の実験値を 見事に再現できる けれども, 温度が低くなると エネルギー等分配の法則が 成り立たなくなり, 実験値をうまく説明 できなくなる と言いました.
 1900年にプランクによって エネルギー量子 の考え方が発表されるや, アインシュタインデバイ (オランダ: 1884 - 1966) は,振動数νの固体の固有振動 のエネルギーは hν を単位として その整数倍しか 許されないと仮定すると, 低温の領域を含む 全ての温度の領域で 固体の比熱を 見事に再現できる ことを示しました(1907, 1912).
 エネルギーが 粒々 (つぶつぶ) に なっている という 「原子的性質」 は空洞放射のみならず, 固体においても 成り立っていることが 明らかになりました.

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