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3-8: 第3部のまとめ

   第3部で学んだことを まとめておきましょう.
  (1) 古典論 (ニュートン力学と マクスウェルの電磁気学) から必然的に導かれる エネルギー等分配の法則 が,低温の物体の比熱や 空洞放射に対しては 成り立たないことが 分かりました.
これは古典論の行き詰まり でした.
  (2) この困難は, エネルギーが連続ではなく 「つぶつぶになっている」 という プランクの エネルギー量子仮説 によって 解決できることが 明らかになりました.
  (3) プランクの エネルギー量子の 考え方を さらに発展させて, 光は粒子 であると考えられることが 明らかになりました. 光の粒子は 光子 (photon) と呼ばれることになり, 電子 (electron) や 陽子 (proton) のような 粒子の仲間入りをするように なりました.
この光の粒子性古典論からは 想像もつかない驚くべき 性質でした.

  「光の粒子性と波動性」
 光の粒子性明らかになったから と言って, 光の波動性否定されたわけでは ありません. 光が回折干渉起こすことは 光が粒子であると考えると 理解できません.
 光の干渉現象を発見して, 光が波動であることを 最初に確かめた ヤング (イギリス: 1773 - 1829) の複スリットの 実験を考えてみましょう. ヤングの実験装置の 概念図は下図 の通りです.


  ヤングの二重スリットの実験
位相のそろった 単色の光源からの光は 2つのスリット S1S2 を通って 右の衝立上に 干渉じまを生じます.


  ヤングの実験での 干渉じま(縞) の写真が 下図示されています. 図(A)2つのスリットの片方を 閉じたときの写真であり, 図(B)2つのスリットを 両方とも 開いたときの 干渉じま です.


 ヤングの実験で 右方の衝立の上に 干渉じまが生じる理由は, 下図 のように, 左方から入射した 光 (波動) が 2つのスリットを通過した後 互いに干渉するからです. スリットの間隔を d とすると, スリット S1スリット S2通過した光が 衝立上の点 A に 到達するまでの 光路差 (≒ d sinθ) が 波長λの整数倍 になるとき 干渉しあって 強め合い, その中間が弱め合い, その結果,縞模様が できるわけです.


  二重スリット後の光路差
スリット間隔を d光の進行方向の 角度をθ とすると, 光路差はほぼ d sinθ となり,これが 波長λの整数倍
d sinθ=nλ (n = 0,1,2, ・・・)
のとき強めあいます.


   光が粒子であると考えると, 1つの粒子が 同時に2つのスリットを 通ることは不可能であり, 上図(B) のような 干渉じまは 起こり得ません. 干渉じまが 生じるということは, 光が波動であり,光が 同時に部分的に2つの スリットを通過して 干渉が起きる, と考えざるを得ません.
 このような結果を見ると, 光は,あるときは粒子 であり,あるときは 波動 であるようです. それならば,光は いつ粒子で,いつ波動 なのでしょう? これは大変な難問です. 光の真実の姿は どうなっているのでしょう? この疑問に対する答えは, 1925年以降の 量子力学確立をまたなければ なりませんでした. それまでは 物理学者は, ある場合は粒子説, 別の場合には波動説をとり, 場合々々に応じて 態度を変えるという 甚だ無節操に終始 せざるを得ず, 「午前中は光を粒子と考え, 午後は波動と考える」 といったり, 或いは, 「1週間のうち, 月水金は光を波動と考え, 火木土は粒子と考える」 といった ジョークが 飛び出すありさまでした.

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