第3部目次
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3-4: 光の量子力学

   これまでに学んできた シュレーディンガー 方程式 は, 物質粒子の 波動性すなわち, 粒子の運動に伴う ド・ブローイ波 を記述するために 導入されました. このシュレーディンガー 方程式が,物質粒子の 波動性と粒子性の 二重性見事に記述することが 明らかになりました.
 一方,光もまた 波動性と粒子性の 二重性持つことが 強調されてきました. 古典論においては, もともと光は マクスウェル方程式に従う 電磁波です. 電磁波は 下図 のように 振動する電場 E磁場 B とから 成り立っています. この電磁場の波動が, どのようにして 粒子性持つことができるのでしょう.

  光の波動性
光 (電磁波) は 直交する電場 E磁場 B とから から成っています. EB同じ振動数 (ν), 波長 (λ) で振動する 波動です. したがって,光の速さは c = νλ です. 真空中で

です.

  「空洞内の放射のエネルギー」
 マクスウェルの 電磁気学によれば, 空洞 (真空) 内の電磁波 (光,放射) のエネルギー U は

と表されます. 積分は空洞全体に わたるものとします.
 電場 E磁場 B は, 一般に 平面波 の重ねあわせで 書くことができます. ここで,k は 平面波の 波数ベクトル であり,波長を λ とすれば, k の大きさは | k | = 2π/λ です.
 例えば, 電場 E

と展開できます. は,それぞれ 垂直, 水平方向の 単位ベクトルであり, はそれぞれの方向の 電場の強さです. 磁場についても 同様です. ここで大切なことは, 電場や磁場が さまざまな波数 (波長) の波動を重ね合わせたものである ということです. この結果を使うと, 空洞内の放射のエネルギーは,

と書かれます. ただし,

です. (4) 式は質量が 1 の 「重り」 のついたバネの運動 (調和振動子) と同等です. すなわち, k 番目の 調和振動子の 座標と運動量 と考えると, (4) の 第1の式は バネの「重り」 の 速度と運動量の関係, 第2の式は 「重り」 に対する ニュートンの運動方程式 です. マクスウェルの 電磁気学から これらの結果を どのようにして導くか, その詳細は結構面倒ですから, ここでは省略します. 下の結論だけを理解してください.
 以上の (3),(4) 式を見ると, 空洞内の 電磁波 (放射) は 無限に多数の 調和振動子の 集まりと同等であるということになります.

  「電磁波 (光) の量子化」
 上のように, 光は調和振動子 (バネ) の 集団であることが 分かりました. これを 量子力学取り扱うと, すなわち 量子化 すると, 本セミナーの 1-6 ページ 3-1 ページ で既に見たように, 調和振動子 (バネ)エネルギー固有値

を単位として, その整数倍の 飛び飛びの値 になります. これはまさに, プランクエネルギー量子 に他なりません. つまり,空洞内の放射の エネルギーは粒々 (つぶつぶ) に なっている のです.
 なんと素晴らしいことでしょう. 古典論 (マクスウェルの 電磁気学) に従う 電磁波を,量子力学的に 取り扱うだけで エネルギー量子が 現れるのです.

  「光と荷電粒子の相互作用」
 上に述べたように, 電磁波は電場と磁場とで 成り立っているので, 電子 のような 荷電粒子 に当たると, 勿論,電磁波は 電子に力を及ぼし, 電磁波と電子の間に 相互作用が生じます. この相互作用を正しく 取り扱うには, 電子に対する シュレーディンガー 方程式 と, 上に述べた 電磁波の 量子力学 とを 結びつければ よいでしょう. これを定式化したものが 量子電磁力学 です.内容は少し 高度ですから,ここでは その説明は省略します. この理論を用いると, アインシュタイン光電効果の理論 や, コンプトン散乱 のような光と物質粒子 の相互作用に関する 全ての「謎」が 完全に解決されるのです.
 このようにして, 物質粒子波動性粒子性二重性量子力学 の中で 完全に統一され, 「ミクロの世界の謎」が 完璧に解決されました.

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