九州大学 大学院理学研究院 物理学部門実験核物理研究室

エキゾチック核の構造

陽子と中性子の数がアンバランスな原子核の性質は?

天然に存在する安定な原子核に比べて、陽子数と中性子数の比が大きく異なっているエキゾチック核の性質を研究しています。

未知の共鳴状態の研究(寺西)

ドリップライン近くのエキゾチック核は、中性子ハロー構造等の特異な構造を持つことが次第に明らかになっています。これらの原子核のエネルギー準位の多くが粒子放出に対して不安定な「共鳴状態」として現れます。構造、崩壊様式、天体核反応への寄与等を理解するために、RIビーム施設およびタンデム加速器施設において共鳴反応・散乱の実験を行い、未知の共鳴状態の探索を行っています。

窒素(陽子数7)の同位体のうち、12N(中性子数5)から23N(中性子数16)までが、核子の束縛系として存在しますが、例えば10N(中性子数 3)原子核は存在しないのでしょうか?実は、「共鳴状態」としてごく短時間(10-21 秒程度)の間存在します。このようなエキゾチックな「非束縛核」を外部RIビーム施設での実験により探索します。

陽子共鳴散乱による非束縛状態(共鳴状態)の探索

スピン操作を利用した核分光研究(市川・高峰)

天然に存在する安定な原子核に比べて、陽子数と中性子数の比が大きく異なっているエキゾチック核の性質を研究しています。エキゾチック核は超新星爆発や中性子星合体などの天体現象の際に一瞬だけ存在していたと考えられており、私たちの身の回りの元素が宇宙でどのように創り出されたかの鍵を握ります。このようなエキゾチックな原子核を加速器で人工的に生成して、状態のスピンパリティや核電磁モーメント、状態間の遷移強度などの測定を行います。エキゾチック核の内部では陽子や中性子はどんな運動をしているのか、全体としてはどのような形をしているか、などの性質を調べることで、原子核の奥に潜む本来の姿を見出し、元素創生の手がかりを探ります。核反応によって原子核ビームのスピンの向きを揃えるユニークな手法高精度レーザー分光原子ビーム共鳴法を駆使して実験を行います。実験は理化学研究所やカナダのTRIUMF研究所などの加速器施設で行っています。

精密質量分光による核構造研究(高峰・庭瀬)

質量とエネルギーの等価性が示すように、原子核の質量は原子核の結合エネルギーを直に反映した量です。つまり、原子核質量を測定することで、その原子核がどれだけ安定なのか知ることができます。私たちはMRTOF装置を使って、様々な原子核の質量を正確にかつ精密に決定し、中性子数や陽子数に対して結合エネルギーがどのように変化するかを精査します。その結果から、原子核の魔法数はどこまで成立するのか、原子核の変形の兆候があるかを探り、幅広い不安定核領域にわたって核構造を研究しています。